救急隊員として働いていると、過酷な状況に直面することは珍しくありません。
特に、雪に慣れていない地域での大雪は、普段以上に厳しい環境を生み出します。
十数年前、そんな大雪の日に機関員として当務の朝から翌日の夕方まで活動し、一睡もできないまま走り続けた経験がありました。
今回は、その時の過酷な状況を振り返りながら、雪の日の救急出場の厳しさと救急隊員の限界についてお話ししたいと思います。
1. 雪に不慣れな地域での緊急走行
私が勤務していた地域は、普段はほとんど雪が降らない場所でした。
しかし、その日は例年にないほどの大雪が降り続き、道路は完全にマヒ。
除雪も間に合わず、住民も雪道の運転に慣れていないため、至るところで立ち往生やスリップ事故が発生していました。
そんな中での救急出場は、通常以上に運転に気を遣う必要がありました。
路面は凍結し、視界も悪い。さらに、積雪の影響で道が狭くなり、通常なら問題なく入れる路地にも進入できない状況が多発しました。
その結果、現場近くまで救急車で行くことができず、患者のもとへたどり着くまでにかなりの距離を歩く必要がありました。
2. 終わりの見えない出場と過酷な搬送
当務明けの朝7時頃、やっと交替できるかと思いきや、かなり遠方への出場指令がかかりました。
しかし、大渋滞のため、緊急走行でも反対車線に出ることができず、現場到着までに2時間以上を要しました。
さらに、現場に着いたものの、雪の影響でストレッチャーを搬入できない状況に直面。
通常であればストレッチャーで搬送できる患者も、担架で運ばざるを得ませんでした。
雪道での担架搬送は、足元が滑りやすく、想像以上に体力を消耗します。搬送中も、隊員同士で慎重にバランスを取りながら進まなければならず、普段の何倍も負担がかかるものでした。
そこから患者を病院へ搬送し、病院を引き揚げたのが10時頃。
「やっと署に戻れる」と思いながら運転していましたが、無線が鳴り、またもや出場指令がかかろうとしていました。
3. 限界を超えた瞬間
この時、私は自分の限界を感じ、初めて隊長に「限界です。このまま帰らせてください」と訴えました。
結果、その出場は見送られたものの、安堵したのも束の間、すぐに再び指令が入りました。
今度は有無を言わさず、出場せざるを得ませんでした。
なんとか現場に到着し、患者を病院まで搬送。
消防署に帰れたのは午後5時を過ぎていました。
そこまでヘロヘロになった経験は、あの日が初めてでしたし、それ以降もあそこまでの極限状態になったことはありません。
4. 雪に慣れていない地域での救急活動の厳しさ
雪国であれば、除雪体制が整っていたり、住民の雪道運転の意識が高かったりします。
しかし、雪に慣れていない地域では、ちょっとした積雪でも道路状況が一変し、救急活動が通常の何倍も大変になります。
- 路面凍結によるスリップのリスク
- 渋滞や立ち往生による時間のロス
- 積雪による道幅の減少で現場にたどり着けない
- ストレッチャーの使用が困難になり、担架搬送が増える
こうした状況下では、機関員はいつも以上に慎重な運転を求められ、現場の隊員も長距離を歩いたり、担架での搬送を強いられたりと、精神的・肉体的に大きな負担がかかります。
5. 救急隊員も人間—限界は必ず来る
救急隊員は人命を救うために全力を尽くします。
しかし、救急隊員自身も人間であり、限界は必ず訪れます。特に雪の日は、運転や搬送にいつも以上に気を遣うため、心身の負担が大きくなります。
だからこそ、 「早めの交替」「休めるときに休む」 という意識が重要です。
救急隊員が健康でなければ、本来の業務を遂行することはできません。
6. おわりに
雪に慣れていない地域での大雪は、救急活動にとって大きな試練になります。
私自身、限界を超えた経験を通して、「休息の大切さ」「救急隊員のコンディション管理」の重要性を痛感しました。
これからも、救急隊員が健康に活動できる環境が整うことを願いながら、現役の方々には無理をせず、適切な判断をしてほしいと思います。
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