緊急事態で救急車を呼んだのに、「なかなか出発しない」や「あの救急車ずっと止まっているなぁ」と感じたことはありませんか?
すぐに病院へ向かってほしいのに、救急隊が車内や現場で何かをしている様子を見ると、不安になることもあるでしょう。
実は、救急車がすぐに出発しないのにはいくつかの重要な理由があります。
ただ単に時間をかけているわけではなく、患者の安全や適切な治療のために必要な手順を踏んでいるのです。
この記事では、元救急隊員の視点から「救急車がなかなか出発しない理由」について詳しく解説します。
1. 必要な処置を優先しているため
救急隊が現場に到着したとき、患者の状態によっては出発前に応急処置を行う必要があります。
例えば、
- 気道確保(呼吸ができるようにする)
- 点滴の確保(脱水やショック状態の改善)
- 止血処置(大量出血を防ぐ)
- 骨折の固定(搬送時の痛みや損傷の悪化を防ぐ)
など、病院に到着する前に行うべき処置が数多くあります。特に心肺停止や重篤な症状の場合、現場で心肺蘇生や薬剤投与を行うことが最優先となり、その間は出発できません。
こうした処置を怠ると、移動中に患者の状態が急変するリスクが高まり、安全な搬送ができなくなるため、必要な時間をかけて対応しています。
2. 搬送先の医療機関が決まらないため
救急車がすぐに出発しない理由の一つに、「受け入れ先の病院を探している」ことが挙げられます。
病院は常に患者を受け入れられるわけではなく、
- ベッドが満床で受け入れ不可
- 専門医が不在で対応できない
- 他の救急搬送患者の対応中で手が回らない
などの理由で、救急隊が複数の病院に問い合わせる必要があるのです。
特に重篤な患者の場合は、高度な医療が受けられる病院を選ぶ必要があり、受け入れ先の確保に時間がかかることがあります。
また、病院が決まらないまま出発すると、搬送途中で適切な医療を受けられない可能性があるため、慎重に判断しています。
3. 患者や家族が搬送を拒否する場合
救急車を呼んだものの、患者自身や家族が搬送を拒否するケースもあります。
例えば、
- 「自分は大丈夫だから行かなくていい」と患者が判断する
- 家族が「様子を見たい」と搬送をためらう
- 認知症や精神疾患があり、本人が搬送を拒む
こうした場合、救急隊は患者の状態を説明し、搬送の必要性を理解してもらうよう努めます。
しかし、無理に搬送することはできないため、説得に時間を要することもあります。
また、法律上、意識のある成人が「搬送を拒否する」と明確に意思表示をした場合、救急隊はその意思を尊重しなければなりません。
たとえ家族が搬送を希望したとしても、本人の意識がはっきりしており、拒否の意思が明確であれば、救急隊は搬送を強制することはできません。
4. 観察やバイタル測定、情報収集をしているため
救急搬送では、病院に到着した時点でスムーズに治療を始めるために、事前に患者の情報を詳しく把握することが重要です。
そのため、救急隊は搬送前に以下のような情報を収集します。
- バイタルサインの測定(血圧、脈拍、呼吸数、酸素飽和度など)
- 発症時刻や症状の経過
- 既往歴(持病や服薬状況)
- 事故や怪我の原因
これらの情報は病院に伝えるために必要であり、適切な処置を行うためにも欠かせません。
また、現場での観察により、症状が一見軽く見えても、実は重篤な状態であることが判明することもあります。
そのため、しっかりとした評価を行ってから搬送を開始することが求められます。
5. まとめ:救急車は安全で適切な搬送のために動いている
救急車がすぐに出発しないのには、以下のような理由があります。
- 必要な処置を優先している(搬送中の悪化を防ぐため)
- 搬送先の医療機関が決まらない(適切な治療を受けるため)
- 患者や家族が搬送を拒否している(意思を尊重するため)
- 観察やバイタル測定、情報収集をしている(病院での治療をスムーズにするため)
決して無駄な時間を過ごしているわけではなく、すべては患者の安全を最優先に考えた対応なのです。
もし救急車を呼んだ際に「なかなか出発しない」と感じたら、救急隊が患者のために必要な処置をしていることを理解し、落ち着いて対応していただければと思います。
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