救急現場では、一刻を争う状況の中で冷静かつ迅速な判断が求められます。
ところが、経験を積むことで生まれる「慣れ」が、時として慢心を招き、重大な事故や判断ミスにつながることがあります。
本記事では、救急隊員としての経験を通じて、「慣れ」によるリスクがどのように命に関わる危険を引き起こすか、そしてそのリスクを避けるための具体的な回避策についてお伝えします。
慣れが招く命の危険
あなたは最近の業務の中で、「これは慣れているから大丈夫」と油断したことはありませんか?
救急隊員としての経験が深まると、初めての頃の緊張感や慎重さが薄れていくことがあります。
その「慣れ」が、思わぬリスクを引き起こすことになるのです。
特に、患者の状態や緊急走行中の判断ミスが命に関わる可能性があることを忘れてはいけません。
慢心が招くリスクのメカニズム
救急現場では、一つひとつの判断が患者の生命に直結します。
しかし、「このケースは以前と同じだから大丈夫」といった思い込みが危険を招くことがあります。
同じ症状であっても、患者の背景や病態は異なり、見落としてはいけないポイントが存在します。
また、緊急走行においても同様です。
最初は慎重に運転していた機関員も、回数を重ねるうちに「この道なら問題ない」「この速度なら安全だ」と油断しがちです。
しかし、その一瞬の判断ミスが重大な事故につながる可能性があります。
実際のヒヤリハット事例
私自身、幸いなことに現役時代に大きな事故には至らなかったものの、何度もヒヤリハットを経験しました。
その中には、以下のようなケースがありました。
- 緊急走行中、横断歩道を渡る歩行者に気づくのが遅れた。
- 患者の症状を過去の経験と照らし合わせて判断し、結果的に病態を見誤りそうになった。
- 狭い路地での運転に慣れすぎて、車幅の感覚を誤り接触しそうになった。
特に印象に残っているのが、ある幹線道路での緊急走行時の出来事です。
実際のケース:逆走の判断ミス
渋滞により進行が困難となり、反対車線の交通量が少なかったため、逆走を選択しました。
約500m先の信号までは問題なく進めると判断し、対向車がいないことを確認。
しかし、その時、渋滞中の車両の間から突然人影が現れました。
時速60kmでの走行中、急ブレーキも回避行動も間に合わず、ただ突っ切るしかない状況でした。
幸運にもその人影はセンターラインを超えずに止まってくれたため、事故には至りませんでした。
しかし、この経験を通じて、「見えていない危険」が常に潜んでいることを痛感しました。
慢心を防ぐための実践法
慢心による事故を防ぐために、以下の点を意識していました。
- ルーチンワークでも毎回初心に帰る
- 過去の経験に頼りすぎず、基本的な評価を徹底する。
- 「慣れた道」でも常に危険を予測しながら運転する。
- ヒヤリハットを振り返る
- ヒヤリとした出来事をそのままにせず、原因を分析する。
- 隊内で情報を共有し、同じミスを繰り返さないよう対策を考える。
- 定期的に技術の確認をする
- 運転技術や医療技術を定期的に振り返り、自己流にならないようにする。
- シミュレーション訓練を通じて、危険な状況を疑似体験し、対応能力を高める。
今日から実行すべき具体的なアクション
最後に質問です。あなたは今日の業務の中で、少しでも「慣れ」による油断を感じた瞬間がありましたか?
もし思い当たる節があるなら、ぜひ次の4つを試してみてください。
- 毎日の業務で初心を忘れない
業務をこなす中で、少しでも「慣れ」を感じたら、すぐにその瞬間を振り返り、初心に立ち戻るようにします。例えば、チェックリストを使って、毎回の判断を再確認する習慣をつけましょう。 - ヒヤリハット事例を共有する
少しでも危険を感じた事例やヒヤリとした瞬間があれば、必ずチーム内で共有します。こうした情報交換が、同じ過ちを繰り返さないための重要な一歩です。 - 定期的に技術の見直しをする
日常業務の中で、医療技術や運転技術の再確認を意識的に行いましょう。シミュレーション訓練や、技術的な指導を受けることも効果的です。 - 慢心を防ぐためのルールを作る
自分なりの「慣れ」に対するルールを作り、それを守ることを意識します。例えば、「毎回患者の状態を再評価する」「運転中は危険予測を行う」など、具体的な行動に落とし込んでみましょう。
まとめ
「慣れ」による慢心は、救急現場でのリスクを大きく高める可能性があります。
経験を積んで自信がついてきたとしても、その自信が過信となり、重大なミスを招くことがあります。
命を預かる仕事において、冷静で慎重な判断が常に求められるのは言うまでもありません。
今日からできる具体的なアクションを実践することで、あなた自身の判断力をさらに向上させ、患者さんの命を守るための信頼できる隊員として活躍できるようになります。
自分自身の業務を見直し、日々の行動に意識を向けることが、慢心を防ぎ、事故を未然に防ぐための第一歩となります。
いま一度、初心を忘れず、常に慎重に対応することを心掛けましょう!
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