救急車が“遅い”のには理由がある!緊急走行の裏に隠された本当の事情

「サイレンを鳴らしてるのに、なんだかゆっくり走ってない?」

救急車を見かけたとき、そんな風に思ったことはありませんか?

法定速度よりもゆっくりと走っているように見えて、「もっと急いでくれないと困る」と感じた方もいるかもしれません。

でも実は、救急車はただ“速く走る車”ではなく“命をつなぐ移動する医療現場”なんです。

この記事では、救急車が「なぜ速く走らないのか」、そして逆に「いつスピードを上げるのか」について、元救急隊員の視点からわかりやすく解説していきます。

目次

1. 救急車は「のろのろ」? 世間の声と誤解

SNSやネットのコメント欄には、こんな声があふれています。

  • 「サイレン鳴らしてるのに全然速くない」
  • 「もっと急いでくれないと意味がない」
  • 「病院に急ぐんじゃないの?なんでゆっくり?」

確かに、一般的なイメージでは救急車は一秒でも早く病院に向かうものと思われがちです。

しかし、救急車の役割は「単に速く運ぶ」ことではなく、「安全に、傷病者の命を守りながら搬送する」ことなのです

2. 救急車がスピードを抑える理由

(1) 道路状況や安全性の確保

救急車がスピードを出すには、それに見合った“安全な走行環境”が欠かせません。

  • 交差点や見通しの悪い場所では減速が必須
  • 雨や雪など、滑りやすい路面では特に慎重な運転が求められる
  • 一般車両がしっかり道を譲っていない場合、無理な走行はできない

どれだけ急いでいても、二次被害(事故など)を起こせば元も子もありません。

常に安全第一が原則です

(2) 車内での処置や観察を続けるため

救急車の中では、救急隊員が傷病者に対して以下のような処置を行っています。

  • 酸素投与や点滴の管理
  • 心電図モニターでの状態観察
  • 出血や意識レベルの変化のチェック
  • CPR(心肺蘇生)の継続

急加速や急ブレーキがあると、こうした処置が非常に困難になります。

車内は限られたスペースです。

落ち着いた運転が傷病者の命を守る上で重要なのです

(3) 傷病者の容態悪化を防ぐため

以下のような患者には、振動や揺れが致命的になる場合もあります。

  • 頭部外傷や脳卒中の可能性がある傷病者(揺れで症状悪化の恐れ)
  • 心疾患の傷病者(興奮やストレスが大敵)
  • 骨折などの外傷傷病者(振動で激しい痛み)

スピードを抑えることで、傷病者の容態を安定させたまま搬送することができるのです。

3. それでも速く走るときがある

「救急車=常にゆっくり走る」と思われがちですが、実際には状況に応じてスピードを上げることもあります。

すべては“傷病者の命を守る”という目的に沿った判断であり、決して漫然とスピードを抑えているわけではありません。

以下のような場面では、安全を確保しつつ、可能な限り迅速な搬送が行われます。

● 深夜や交通量が少ない時間帯

深夜帯や早朝など道路の交通量が少なく歩行者や他車両の影響が少ない時間帯では、よりスムーズに走行できます。

見通しの良い直線道路や広い幹線道路では安全確認がしやすく、比較的スピードを上げやすい環境が整っています。

● 一刻を争う重篤なケース

重症外傷やショック状態、心肺停止など、緊急性が非常に高い場合には、少しでも早く病院へ搬送することが最優先となります。

搬送中も処置は継続されており、病院への到着時刻が傷病者の予後を大きく左右するケースも少なくありません。

こうした状況では、安全運行を徹底しながらも時間との戦いになるため、救急隊は可能な限りスピードを上げて搬送を行います。

● 高度医療機関や専門病院への搬送時

最寄りの病院では対応が難しいと判断された場合、設備の整った専門病院や救命救急センターへ搬送する必要があります。

距離が遠くなることも多く傷病者の状態が安定しているうちに一刻も早く到着しなければならないため、安全性を確保しながらスピードを意識した搬送が行われます。

4. まとめ:救急車は命を守るために走っている

救急車が「遅く感じる」ときには、そこに必ず理由があります。

  • 道路状況や安全を最優先している
  • 車内での医療処置のためにスピードを抑えている
  • 傷病者の状態を悪化させないために慎重に走っている

とはいえ、救急隊員も常に「時間との勝負」であることを意識しており、状況に応じてスピードを調整しながら最適な判断で搬送を行っています。

救急車を見かけたとき、「遅いな」と感じる前に、その車内で命を守るための懸命な処置や判断が行われていることを、少しだけ思い出してもらえると嬉しいです。

最後に、あなたへのお願い

救急車が通るとき、ほんの少しの配慮や協力が誰かの命をつなぎます。

あなたのその一瞬の判断が、大切な人の未来を変えるかもしれません。

どうか「救急車は、命をつなぐ移動する医療現場」だということを忘れず、これからも温かいご理解とご協力をお願いいたします。

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